●CALMA」3/9-3/15/2019

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3 months ago

床の間はおもしろい。

現代日本において、時代おくれ空間ともおもえる床の間は、日本の独特のカルチャーであり時代の間で歴史を語るように日々日本のあちこちで客をもてなしている。この空間は手を抜けばいくらでも手を抜きさらっと見て見ぬふりをする場所でもあるが、非常に限定された空間美をもつ世界でも希な展示空間である。ARTの社会性に言及しているCALMAにとってこの発見は大きい。もてなす機能をもった場所、わすれさられた整地として小さな展示室が眠っていたのだ。早速自宅の一部を改装して実験を繰り返しようやく本格的な展示にこぎつけた。それが今回の佐賀県嬉野市老舗旅館での展示となる。

佐賀県は嬉野温泉、190年の歴史を持つ旅館である大村屋さんには友人を通じて通うことになるのだが、ここの入り口に鎮座する大きな床の間に目を奪われた。これほど巨大な床の間が、入って直ぐのこの距離で迎えらることは今まで一度も無い。ここならばと、完成画が浮かんだ。しかし、190年の老舗旅館に突飛な提案はなかなか言えないましてやARTなど日本では全く流行ってもいないし教育もすすんでいない事はここまでの人生で痛いほど身にしみている。「おまえ何いってんだ?」といわれて当然、迷惑な変わり者扱いされてしまう可能性が高い。しかし、大村屋を紹介してくれた友人がだいぶ奇特な提案をする男で、おかげで僕の提案は宿主のやわらかな「?」と理解にうけいれられ2年ごしの床の間展示の本格的デビューをはたす。

 あわせて幸運なのは、毎年開催されるピーター・バラカンさんのイヴェント「バラカンナイト」の日に合わせてもらう事が出来たことだ。音楽好きのお客さんを床の間でもてなすという最高の展示の舞台がそろった。バラカンナイトと称されるこのイヴェントにはピーター氏はもとより、大村屋ゆかりのつわものDJが集い芸子さんをまじえて強烈に盛り上がるカオスなアフターパーティーが存在する。そこにCALMAの作品もまじわるわけだからもうこれは時空が乱れるほどのたのしい。

今回の展示では音楽好きのお客さんを床の間でもてなすという設定をつくり各所に音にまつわる作品を仕込んだ。ホワイトキューブでの展示だけではなく、こういう制限付きが今進めている展示スタイルではかなりちがい状況対応にタフになれる。大型アートイヴェントは場にそぐわないART が多くて無責任だなと思う。パブリックアートには責任を持ちたい。多くは税金を使い人の目に触れる展示するのだからARTよがりをそのまま持ち込んだような作品は意味不明で迷惑な物が多い。ARTなど、この国では全く流行っていないのだから。さておき、床の間は半パブリックスペースでもある。室内の客は日々入れ替わる。お客さんを意識しつつ自分のコンセプトと価値観で人をもてなすのはとてもおもしろく難しくかった。

さらに旅館は、客商売である。ホワイトキューブの準備とはわけが違う。例えば、まず旅館の片付けから始める。既に飾られている物に番号や名前をフリ、元に戻せるようかたづける。高価な貴重品もあるので行動は慎重に、一度に物は運ばない。安全最優先である。そして設置。各部屋に物を搬入するのもお客さんの居ない時間帯のみ。ベッドメイキングのタイミングに運び込み、思い通り収まらないときは何度も何度もやり直す。これを繰り返し一部屋づつ仕上げていくのだが、設営に歩いた歩数が1日、2万歩にもおよんだ 。どうりで足が疲れたわけだ。

 

それだけ苦労したとしても人の反応は半々なものである。理解してもらえるか、否か?は悩ましいところであるがARTとはそういう物である。当主であるK氏はなんども食事を共にしているしラジオ番組を持つほどのビートルズ好きなので少々のことは想定内だと思うが、まだ見ぬ若女将や女将、大女将、会長は理解し、許してくれるだろうか?以前にも多大な労力をさいて製作した渾身の作品を発表直前で発表中止させられるという、デュシャンの便器を地でいくような経験をして居るので小心者の僕には不安でいっぱいだった。

そして、当日、前日設営が3amに終わり焼酎をのんで4amに寝たが気持ちが高ぶり早めに目が覚める。朝からまぶしいほどの好天、朝日を瞳孔一杯に吸い込みながら入る大村屋の朝温泉は最高だ。仕事は納めた達成感と共に評価の懸念はこころにのこる。そう、もちろん夜中に仕掛けたバイクの作品は玄関で堂々と展示されており、今まさにお客さんや旅館の皆さんの目にさらされているのだ。

 

「これはあかん! 直ぐかたずけえええ〜。」 と、いつ怒鳴られてもよい準備をしていたが幸運にもその機会はこなかった。ピーターバラカンさんも到着したようで、とても喜んでくれた様子がバラカンさんのFBに上がっていた。そして海外のお客さんが多いこの旅館では、あちらこちらで展示した作品の写真を撮る姿が見受けられ胸のすく思いだった。また、フロントでの手続き、エレベータを待つ、エレベーターが開く、などの独特の潜在的行動が旅館にはあり、そこに仕込んで展示したものが良く機能した。

 

今回新たな作品をデビューさせた。言葉を磁器で焼いた「磁器文字」と石膏面をキャンバスにして鉱物を埋め込んだ「鉱物面」。言葉や顔は誰も興味を持つわかりやすいモチーフ。言葉はさまざまな可能性を含むし、文字離れのすすむ現代で、「言葉」を「物」に置き換え、状況と共に表現することを思いついた。今回は掛け軸に配置してみたが他の可能性も膨らむ。「鉱物面」はこれから制作をふやして複数展示に持ち込みたい。提灯を手作りしたのも良い経験だった。語ればきりがないほどさまざまな意味を兼ねた作品展示になった。まだまだCALMAの床の間の道はひらいたばかり、さらなるアイデアと展示を増やしてCALMAのARTと生活をちかづけていきたい。

写真撮影:藤本幸一郎

今回の展示の事をピーター・バラカンさんがラジオで取り上げてくれた。ラジオのリンク先は以下

https://www.tfm.co.jp/podcasts/museum/

 The Lifestyle MUSEUM 千宗屋さん_vol.568